このような日々

今年読んだ本について必死で思い出して感想を書く会

2025.12.31

サークルの同期に、おすすめの本を教えてほしいというようなことを言われ、ちょうど年末であるので1年の読書遍歴を振り返るのも良いかと思い、今年読んだ本について書き出してみようとした。

そして数冊書き出したところで手が止まった。はて、私は一体、今年何を読んだのだろう?
――しばらく頭を捻ってみたがさっぱり思い出せない。

これはまずい。

読書記録をつけるようなマメさはあいにく持ち合わせがないし、秋にようやく日記をつけ始めてみたものの、このご時世にルーズリーフに手書きという形式をとっているため検索性という概念が存在しない。また生来の気まぐれゆえに読んでいた本を全てまじめに記録している保証は一切ないため情報源としては頼りにならない。

おまけに市の図書館の貸し出し記録は残っていないので意味がないし、大学の図書館はネットから貸し出し記録を見ることができるが、個人情報保護の観点からかその機能はデフォルトでオフになっており、それに気づいてオンにしたのがつい2ヶ月ほど前であるため同じく意味がない。

はっきり言って手詰まりであるのだが、ともかく手元にある本と、おぼろげに残った記憶を頼りに書き出してみようと思う。

まずは比較的しっかり覚えている最近から順に遡って行こうと思う。

小説の読み書き / 佐藤正午

筆者の所感と分析がてんでに入り混じっていて面白い。自分の感覚でものを言ってもいいんだと思わせてくれる。もっと本が読みたくなるし書きたくもなる。
ときおり、ネタか?と思うような箇所があり、ボケとして言っているのかそうでないのか判断に迷うがどちらでもよいと言えばよい。面白いので。

変身 / フランツ・カフカ

ドイツ文学の授業を取っている(がしかしここのところめっきり行けていない)ため参考として購入。失踪者は今読んでいるところ。訴訟もそのうち読む。

悪魔の辞典 / アンブローズ・ビアス

幸福 ── 他人の不幸を眺めることから生ずる気持の良い感覚。

文庫の体裁をしているが文字通り辞典である。皮肉、今の時代であれば冷笑と称されるたぐいのものであり、こういう項が延々と続く。
個人的には嫌いじゃないしむしろ好きだが、これを好きと公言する人とはあんまり仲良くなれないだろうと思う。これはすなわち私の性格がよろしくないことの証左である。

5月、その他の短編 / アリ・スミス

個人的には気に入った。が、物語自体に面白さを求めるなら読むべきではないとすら思う。
なんというか、感想を書くことが難しい。整合性のあるストーリーとして読もうとすると肩透かしを食らう。どこか遠くの知らない人の生きる一瞬を追体験しているような感覚に陥る。

日記にお気に入りの1節を書き抜いていたので引用。

日々の雑事をきちんとこなし、とどこおりなく運営していくこと。”かまどの火を絶やさないようにする”こと。生き延びるとはそういうことだ。たとえもっと大切そうに見えることが終わりかけていようと、バスタブのホーローを塗装しなおしてもらうこと。

異常【アノマリー】/ エルヴェ・ル・テリエ

面白かったけれど、なにが面白かったのかと問われると返事に困る。
SFとミステリの間を反復横跳びして、社会風刺と哲学を通り過ぎ、しまいには人間に落ち着く。何を言っているのか分からないと思うが書いている側もいまいち分からない。

まったく新しいアカデミックライティングの教科書 / 阿部幸大

この1年レポートというものに苦しめられた証拠である。いったい何をどうすればいいのか今でもよくわからない。
そういう意味では参考になったし、単純に読み物としても面白かった。

三体X 観想之宙 / 宝樹

本編の作者とは違う人物が書いたスピンオフであり、いわゆる二次創作的なものらしい。スケールがデカすぎてびっくりしたが面白かった。三体は面白いのでぜひ読むとよいです。SFが苦手でも比較的読みやすいはず。

ビアス短編集 / アンブローズ・ビアス

ビアスの名前が思い出せず、「岩波 赤 短編集」でググって画像から総当たりした。比較的最近読んだ本なのにすでにこの有様である。
内容については、面白いというより、ぞっとするような奇妙で印象深い短編が多かった記憶。
目次を参照しながらかろうじて思い出した「月明かりの道」「アウル・クリーク鉄橋での出来事」「犬油」、このへんは結構しっかりオチがついていて面白かった記憶。

百年文庫 32 黒

特定のテーマを設定して国内外の短編をいくつか収録するアンソロジーみたいなもの。1から読もうと思ったがあいにく図書館では貸し出し中であった。とはいえ真っ先にこのタイトルを選んだ点に中二病の血が見て取れる。
3編入っていたはずなのだが夢野久作の「けむりを吐かぬ煙突」しかちゃんと覚えていない。いい加減ドグラ・マグラを読むべきということだろうか。いちおう青空文庫でも読める。

追記 : 読書メーターを見たらホーソーンのは思い出した。「見よ!どの顔にも「黒のベール」があるではないか!」

アクロイド殺し / アガサ・クリスティ

春に買って半年近く積んでいたのをこの時期にようやく消化。
クリスティ作品は小さい頃に好きだったので、中高時代も含めれば何度めかのチャレンジになるのだが、毎度そこまで楽しめない。そもそも己にフーダニットを楽しめる感性がないような気がしている。

チョコレートコスモス / 恩田陸

面白い。
読書習慣逸失の危機を感じ、ともかく既読の読みやすいものを再読してみようと思って本棚からセレクト。
こちらもエンタメ的レベルが高い。同作者の蜜蜂と遠雷に通ずるものを感じる(特定ジャンルにおける天才と秀才を魅力的に描くという点で)。読んでる間はスマホを手放すことができるのでとてもよい。

偉大なる、しゅららぼん / 万城目学

夏だったか秋だったか忘れたが、たぶんこのへんで読んだはずである。ひっくり返るくらい面白かった。シンプルにエンタメとしてレベルが高すぎる。
男主人公が、顔が良いあるいは能力のある男に対し、いけ好かない感情を抱くも徐々に情を抱いて変化していく、みたいな関係、既視感があるんだけれどこれはどこで見た何の記憶だろうか。鴨川ホルモーと四畳半神話大系あたりをごた混ぜに認識している気がする。ここらへん全部好き。
両方ともひっくり返るくらいおもろいかつ京都が舞台なのでおすすめ。

春季限定いちごタルト事件 / 米澤穂信

小市民シリーズの一番初め。今年アニメ化されたやつ。続きを読もうと思って読めていない。そもそも米澤穂信作品が全体的にいつか読もうと思っていて、思うだけでなかなか手が伸びない。
王とサーカスはけっこう面白くて、本と栞の季節はめちゃ面白かった。氷菓もいつか読むつもりではいるが、いつになることやら。

テスカトリポカ / 佐藤究

直木賞を受賞したものの審査員たちの評価は二分されたという問題作(問題作という言葉はさして好みでないが)。
グロい!が清々しい!気持ちいいが気持ち悪い!すごい!
なんというか、比較的ぶしゃっぐちゃっという感じのグロさで、ねちゃねちゃしてはないので結構すっきり読める。とはいえグロ苦手な人は要注意。

短編ミステリの二百年 / モーム、フォークナーほか

なんか……確か夏に図書館で借りた……ミステリ短編集みたいなやつ……と必死でググって無事解決。あまりにもひどい記憶力。

面白かったが、ミステリとして読みやすくはなかった記憶。分かりやすい伏線回収や謎解き、推理のあるものはあまり多くない。
目次と読書メーターを代わる代わる参照しながら内容を気合いで思い出そうとし、結果確実に面白かったことが思い出せたのは「クリームタルトを持った若者の話」「創作衝動」「さらばニューヨーク」。

烏に単は似合わない / 阿部智里

夏休みの家族旅行に持って行った。
久しぶりに長いファンタジーを読もうと思って買ったところ表紙から想像するのとは若干違う感じのやつが出てきた、がそれはそれで非常に面白かったためよし。読みやすかったし読了後しばらく呆然とした覚えがある。わりにおすすめ。

1984年 / ジョージ・オーウェル

言わずとしれたディストピアSFの金字塔。主人公とヒロイン――いやしかし彼女をヒロインと称するのはどうなのか?――が思いのほか爛れてて面白かった。自由とはクズがクズのままでいる権利を持つことでもあるんだよなと浅い感想を持つ。

BIG BROTHER WATCHING YOU (ビッグ・ブラザーはあなたを見ている)

↑このスローガンがデカデカと書かれたTシャツを買ったので、今度のサークルの合宿に持っていこうと思う。

声と話し方のトレーニング / 佐藤由美

コミュ障ここに極まれりという感じである。音声コミュニケーションの問題を文字情報で解決しようとするんじゃない。
肝心の内容は、想像とはちょっと違ったものの、これはこれでめちゃくちゃ参考になった。話し方、というか発声そのものの話。アカペラ方面にも参考になるし図解つきでわかりやすいのでおすすめ。

オウム真理教 偽りの救済 / 瀬口晴義

宗教学の授業から。やりきれないなあという思いがある。

三体0 球状閃電 / 劉慈欣

春先、まだ外にいるのがさほど辛くない気温の時期に、吉田南のベンチに1時間ほど居座って読みふけった記憶がある。
私の記憶が確かなら本編は去年のうちに読み終わっていたはずなので、たぶん外伝だったはず。
シリーズ通じて、エンタメ作品としての引力がものすごいなと思う。なぜか全体的にキャラクターはあまり好きになれないのだけれど。

世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド / 村上春樹

高校同期との読書会の折持って行った本なのでこれは絶対に今年。
人生初村上春樹。意外と好きかもしれない。当時の私は、何かのネタにしようと思ったのだろうか、またスマホのメモにぐちゃぐちゃと残してあった。以下はメモ書きより。

割と好きである。世界の終りパートのほうが肌に合う感じはした。自分自身について延々とぐちゃぐちゃ言ってるところなど。

インターネットの村上春樹論と言えば性行為と女性描写に関する苦言であるが、作中に出てくる女性の多くが屈託なく性行為をねだるようなあけっぴろげな人物なので、その女性観に違和感があるというのはまあ分かる。
ただ思うに、必要なのは性行為という外部との接触と、それによって起きる自己のうちの変化や反応であり、女性はそのために置かれた存在にすぎないのではないだろうか。でもってたぶん、それは女性だからというわけでなく、突き詰めれば主人公以外の登場人物は全員、そのために置かれた外部装置にすぎないのでは?と、こんなことを思ったりした。

徹底して自己とそこから見た世界に主眼がある作品だなあと思った。私は嫌いではないし、むしろ好きなやつである。

銃に恋して 武装するアメリカ市民 / 半沢隆実

これもスマホのメモに残ってたし、見なければ思い出しもしなかった。

アメリカ、「自由と独立の国」って自意識がやはり強いんだなと。武力が礼節や平等をもたらしてくれるという感覚がある? 日本人の私からすると、弱者にとっては、自分が銃を持つメリットよりも強者が銃を持つデメリットのほうが大きいのでは、などと思ってしまうのだけれど。

壁 / 安部公房

さあ何を読んでいたっけと本棚を漁った折、懐かし!とデカい声が出た。読み切るのに時間はかかったが面白かった。権力だったり社会のシステムについての、アイロニカルというか、やけに風刺らしい描写が印象に残った。

百器徒然袋・続百鬼徒然袋 / 京極夏彦

これはあれだ、友人が前期試験で東京に行った折に合わせて東京に遊びに行った際、そこに持っていって行きすがらに読んでいた――とそこまでは覚えているのだが、それがこのシリーズの1作目だったんだか2作目だったんだか確かでない。ともかく両方とも今年中には読んでいるのでそのどっちかである。

幼年期の終わり / アーサー・C・クラーク

ここまでくるともはや読んだのが今年なのか去年なのかすらも定かではない。受験が終わってから読んだような気がするのだが、これはもしかしたら去年の記憶かもしれない。

虐殺器官 / 伊藤計劃

これは……今年か……?いや去年か……分からないが、なんか去年だったような気がしてきた。
面白かったがたぶん人を選ぶ。書き出しで圧倒されたのが印象深い。

まとめ

  • 意外といろいろ読んでる
  • 新書もちょこちょこ読んでいるはずなんだけれど全く記憶にない
  • メモは大事

絶対なんかほかにも読んでたと思うんだよな……たぶん、なんか……何読んでたか全然思い出せないが……。

来年はやっぱり読書記録なりなんなりつけようと思う。

来年消化したい積読

  • カラマーゾフの兄弟
  • 百年の孤独
  • 侍女の物語