授業で、最近見た夢、あるいは今までに見た夢について描写するという課題が出た。
書いてみたところ思いのほか面白かったので、手直ししてここに載せる。また、家族に課題について話したところ、最近見た面白い夢の話をしてくれたので、それについても描写してみる。
なお、雰囲気を重視してかなりの描写を加えたため、この文章には多分に脚色が含まれている(もちろん提出したレポートからはそういう要素は除いてある)。しかし筋書きはおおむね夢で見た通りなので、シナリオとしては大分中途半端である。
薄暗い狭い廊下に立っている。明かりはついておらず、長さは数歩歩けば行き止まりに突き当たるくらい、幅は両手を伸ばせないくらいには狭い。床は古いフローリングの木製で、壁も確か同じ木製である。祖母の家のようすに似ていると思ったことを覚えている。
そこから突き当たりの左手にあるドアを抜ける。本来はベランダに繋がるはずであるが、次の瞬間、私は病棟にいる。窓のない長い白い廊下が続いている。等間隔にハンドルのついた白い引き戸がある。点々と蛍光灯が光っている。見覚えのない場所だが、ここは確かに病棟であるのだと思い至った瞬間すとんと腑に落ちた。むしろもとよりそれを知っているような気がしてきた。
歩いていく。私はここに見舞いに来たわけではなかった。むしろ見舞われるほうなのだった。それを鮮明に意識していた。そして私は、そこから精神病棟に向かわなければいけなかった。早く行かないと大変なことになるのだと、私を適切な場所へ戻してくれと強く思っていた。どうしてかはとんと覚えていない。
その後、無事精神病棟への行き方を教えてもらえたはずなのだけれど、誰に教えてもらったのかは分からない。ひょっとすれば自分で勝手に思いついたのかもしれない。
まず、フローリングの狭いほうの廊下に戻る。そこの角に立つ。教えられたとおりに手を組む。組み方としては、一般的に狐の目と呼ばれているようなポーズを想像していただければよい。そして股の下から背後を覗く。そのままの体勢でまっすぐ進むと、目的の場所に着けるという。
覚えているのはそこまでである。
私は山道を歩いている。コンクリートの道である。左手には崖がある。人の背丈よりも高いがある程度の足場がある、頑張れば登れそうなくらいの崖である。登ったところは雑木林である。見渡す限り同じ風景が続いている。
ふと目線を上げる。目を凝らした先、崖の中ほどに、一人の人影を見つける。
私はずっと歩いていく。だんだんそこに近づく。男である。男はつるはしを持って、崖の足元を一心不乱に掘っている。薄汚れたつなぎを着て、坊主頭である。横顔は影になっている。歩いていく。男の横を通り過ぎようとする。男がふいに振り向く。そちらを向く。男はにやりと笑って、「ヨッ」と言う。
ぞっとして、走って通り過ぎた。どこまで走っても、風景はいっこうに変わらない。ただ崖と、道と、林が続いている。速度を緩めて進む。と、覚えのある背中が見える。同じことを繰り返す。近づく。淡く期待をする。もしかしたらこちらを向かぬのではないかと思う。通り過ぎる瞬間、男は振り向く。見たくないのに引っ張られるようにそちらを向く。男は笑う。「ヨッ」と言う。また走る。どこまでも走っていく。
そういう夢である。